電子ビューファインダー(EVF)はどれが良いでしょう?
2015年08月09日
光学ファインダー(OVF)とEVF
ここでは一眼カメラのファインダーを対象にします。レンジファインダー(ライカタイプ)や二眼(現行機種は無いけど)は対象外です。一部、レンズ固定式も対象に入れています。
EVFのメリット
- 撮像素子が実際にとらえた画像を見ることができる。
- かんたんに視野率100%にできる。
- ブーストすることで暗いところでも明るく表示できる。
- 実際の被写界深度を確認できる。
- 各種撮影情報をスーパーインポーズしやすい。
- 拡大表示できる。
- 自由な位置にファインダーを設置できる。
EVFのデメリット
- OVFに比べて表示が粗い。
- 原理的に実際の被写体の動きに対して遅延が発生する。
デメリットに対して、数の上では圧倒的にメリットが勝っています。が、そのデメリットが致命的な場合もあります。スポーツ等の動体撮影はその最たるものでしょう。私のライブ撮影も、これが致命的なので未だにOVF(一眼レフ)オンリーです。
一眼レフのレフとは、レフレックスミラーのこと。レンズの後ろにある、あの跳ね上げミラーのことです。OVFにはこのミラーが必須です。ミラーレスの場合「一眼レフ」と呼ばずに「イチガン」と言うのはレフレックスミラーが無いからです。「ミラーレス・イチガン」というのは、パナソニック・ルミックスのCMフレーズなんですけどね。
EVF比較
比較ポイントを決め、定量的に比べてみます。その上で、実際に覗いた時の感覚(好き嫌い)について検討したいと思います。
メーカー | 型番 | スタイル | 解像度 | 液晶サイズ | 倍率 | タイムラグ | MFアシスト倍率 | チルト | 明度調整 | 色温度調整 |
キヤノン | EVF-DC1 | 電子ファインダー | 236万 | ○ | ||||||
ニコン | DF-N1000 | 電子ファインダー | 236万 | 0.48 | × | |||||
オリンパス | E-M1 | 一眼 | 236万 | 0.74 | × | |||||
E-M5 Mark II | 一眼 | 236万 | 0.74 | × | ||||||
E-M10 | 一眼 | 144万 | 0.57 | × | ||||||
VF-4 | 電子ファインダー | 236万 | 0.74 | 0.032 | ○ | |||||
ソニー | α99 | 一眼 | 236万 | 0.5 | 0.71 | × | 自動明るさ調整、または3段階の手動設定 | 5段階の手動設定 | ||
α77II | 一眼 | 236万 | 0.5 | 0.71 | × | オート、マニュアル(5段階) | 5段階 | |||
α65 | 一眼 | 236万 | 0.5 | 0.71 | × | 自動明るさ調整 または3段階の手動設定 | ||||
α7シリーズ | 一眼 | 236万 | 0.5 | 0.71 | × | オート、マニュアル(5段階) | 5段階 | |||
α6000 | レンジファインダー | 144万 | 0.39 | 0.7 | × | オート、マニュアル(5段階) | 5段階 | |||
NEX7 | レンジファインダー | 236万 | 0.5 | 0.71 | × | 自動明るさ調整、または3段階の手動設定 | ||||
DSC-RX10M2 | コンパクト | 236万 | 0.39 | 0.7 | × | 自動明るさ調整または5段階の手動設定 | ||||
DSC-RX100M4 | コンパクト | 236万 | 0.39 | 0.59 | × | 自動明るさ調整または5段階の手動設定 | ||||
FDA-EV1MK | 電子ファインダー | 235万 | 0.5 | 0.71 | ○ | |||||
パナソニック | DMC-GH4 | 一眼 | 236万 | 0.67 | × | |||||
DMC-G7 | 一眼 | 236万 | 0.7 | × | ||||||
DMC-GX8 | レンジファインダー | 236万 | 0.5 | 0.77 | ○ | |||||
DMC-GM5 | レンジファインダー | 116万相当 | 0.46 | × | ||||||
FZ1000 | コンパクト | 236万相当 | 0.39 | 0.7 | × | |||||
DMC-LX100 | コンパクト | 276万相当 | 0.38 | 0.7 | × | |||||
フジフイルム | X-Pro1 | レンジファインダー | 144万 | 0.47 | × | |||||
X-E2 | 一眼 | 236万 | 0.5 | × | ||||||
X-T1 | 一眼 | 236万 | 0.5 | 0.77 | 0.005 | × | ||||
X-T10 | 一眼 | 236万 | 0.39 | 0.62 | × | |||||
X100T | コンパクト | 236万 | 0.48 | 0.65 | × | |||||
X30 | コンパクト | 236万 | 0.39 | 0.65 | × | |||||
ライカ | EVF 2 | 電子ファインダー | 140万 | ○ |
意外と情報がありません(^_^;
- パナソニックのみ、解像度に「相当」という言葉があります。これはインタレース方式で見かけの解像度を上げているようです。実際に覗くとチラつきが強いように感じます。私がLX-100にたいへん魅力を感じていたにもかかわらずあきらめた理由の一つが、コレです。
- センサーと同じで液晶サイズは大きいほど良いでしょう。それでも掲載している機種は0.39〜0.5型の範囲です。決定的に「これはダメ」な物は無いでしょう。
- ファインダー倍率は、主力機種以上は0.7倍を超えています。これはすべて135判・50mmレンズ・1mに換算した数値です。0.7倍以上とそれ未満では、覗いた時に愕然とするほどの差があります。OVFと同じ傾向ですね。余談ですが、昔のキヤノンAE-1のファインダー倍率は1.0倍でした。そのかわり視野率は80%程度。サービスプリントが主流だったため、初心者向けには「全部見えることが良い」とは言えなかったのかもしれませんね。
- タイムラグはチラつきや被写体の動きとの遅延を気にすると知りたいところですが、ほとんど情報がありませんでした。極端に古いEVF搭載コンデジ(20万画素ぐらい)では、カメラを振ると「ヌル〜ッ」と遅れて動く感じがしましたが、今はそれほどひどいものは無いように思います。
- MFアシストの倍率はカメラに依存するようです。
- チルトはパナソニック・ルミックスGX8を除いて、外付け電子ビューファインダー以外すべて固定です。顔面+両手の三点支持を重視すれば、外付けビューファインダーにもロック機構が欲しいところです。
- EVFの明度・色温度調整機能はぜひ欲しいのですが、こちらもなかなか情報がみつかりません。EVFを覗いた時の色味や明るさは、解像度と同等以上に使用感に影響があります。青っぽいもの、暗すぎるものは、いくら精細であっても使用欲が減退します。
使用感
- キヤノンEVF-DC1の見え方は秀逸です。明るく、色味も正常です。残念ながらたいへんに大型で、EOS M3等に取り付けた時に本体の小ささをスポイルしてしまいます。チルトロックができないのもマイナスポイントです。各機種で共通に使えるようにしているのは良い点でしょう。これと同等の内蔵EVFを積んだEOS Mが出てくることを祈ります。
- ニコンDF-N1000は、実質的に1V3専用です。将来、もっと大きなミラーレスが出てもじゅうぶん対応できる仕様だとは思います。外付けEVFにもかかわらずチルトはしませんので、カメラをしっかりとホールドできます。ファインダー情報があまりにも多く、EVF自体の品質に気が回らないのが残念です。
- オリンパスも明るく、良い色味です。解像度は高いのに、なぜか精細感はあまり感じません。それでも好印象ですから、味付けが良いのですね。外付けEVFは長いことアップデートされていません。そもそもペンシリーズ新型機の噂を聞きません。フェイドアウトかしら?
- ソニーはさすがです。他社とはまったく異なる情報量。αAシリーズとα7のEVFは似た傾向を感じます。暗い・青い・情報がうるさい。調整幅が大きいので、追い込めば良い印象に変わるかもしれません。精細感は抜群です。対してα6000は「なんだ?新機種のくせに144万ドットとはけちったなあ」と思っていましたが、設定が絶妙なのでしょう。明るく快適なファインダーです。ただしMFで使うと目が疲れます。
- ソニーのサイバーショットは、RX10は「ちょっと暗いかな?」ぐらいの印象で、倍率も高く使いやすいです。RX100M4は、本当に「EVFも付いてますよ〜」な宣伝用のネタ程度。まったく魅力がありません。ルミックスGM5のガッカリ感と同様です。「ファインダーがあるコンデジ、いいな!」とRX100を選ぶと大失敗確実です。
- ソニーの外付けEVF、本当はNEX5T用があるのですが、死に筋なのでリストから外しました。RX1用のFDA-EV1MKを全部で使えるように最初から設計しておけば良かったのに。かようにソニーは「1つ1つは良い物を作るけれど、計画性が感じられず行き当たりばったりなシステム構築をしている」印象です。
- パナソニックは好印象です。明るさ・色味が快適に感じます。初めて見た時は「え?EVFだよね?OVFかと思った!」と二度見。ただし解像度に「相当」と書いてある機種はおすすめしません。代表はGM5。実質60万画素ぐらいなのかなあ?小さく・粗く、まあポップアップじゃないだけまだマシ程度です。G7は安いし、機能も豊富で一台欲しいぐらいです。
- フジフイルムはまとめて評価し難く。X-T1、素晴らしいカメラです。センサーも良いし、ホールド性も高くかっこいい。操作系も大好きです。ファインダー倍率も高く精細です。しかし、色味が×。そして暗い。EVFとは関係ないけれど、リング類がクルクルと軽いのも嫌なところです。激しく移動して撮るライブ撮影では、かんたんに設定が変わってしまって使う気になりません。カメラを振った時の「ヌル〜ッ」感も強く感じます。ところが入門機のX-T10は、倍率が下がっていますが印象は良好です。同一メーカーでこれほどテイストが変わるとは。X-T10、欲しいカメラの一台になっています。レンズの絞りリングの軽さはどうしようもありませんが・・・。
- ライカのEVFはオリンパス製とのこと。VF-4がそのまま付くという話を聞きました。これは見たことも触ったことも無いので評価対象外。
どれが良い?
私がEVF機を使うなら
- ソニーα7MkII:精細感は十分。拡大表示も満足です。そもそも唯一のフルサイズミラーレス一眼。2400万画素もちょうど良いサイズです。しかしソニーはレンズがなあ(T_T。魅力的だけれど悩ましい機種です。
- パナソニック・ルミックスG7:EVFなのに自然さがたまりません。さすがはパナです。マイクロフォーサーズはアスペクト比が4:3なのが残念ですが、システムを全部これで揃えるならとても満足できると思います。大きさ・価格も魅力的です。
外付けEVFは、やはり本体に対して大きすぎる気がします。例えばEOS M3+EVF-DC1ならEOS Kiss X7の方がバッグの中でコンパクトに収まります。X7なら取り出す時にひっかかるところも無いし。そもそもレンズの充実度が違いすぎます。外付けEVFはより大型のミラーレス(いっそフルサイズオーバーとか)用になった方がいいような気がします。
この記事は2015/08/09に公開され、120 views読まれました。