電波式ストロボGODOX V1とXワイヤレスシステム徹底解説レビュー。
2020年03月28日
ついに手を出してしまいました、GODOX V1。長らく迷っていたのですが、楽天ポイントが貯まっていたおかげで「エイヤッ」と。キヤノン用のV1を購入して惚れて以来、一気にソニー用・リモートコマンダー、リモートレシーバーまでフル展開です。
※エレクトロフラッシュ、スピードライトと色々な呼称がありますが、ここでは最も一般的であろう「ストロボ」と呼びます。厳密には商標(期限切れらしい)なんですけどね。
どんな時にストロボを使いますか?
超高感度をふつうに使える時代、わざわざストロボを使うのはどんな時でしょう?
フイルム時代はASA100が標準。ASA400が高感度フイルムで、後から中庸を行くASA200も出てきました。強者はTRY-X(モノクロ・ASA400)を増感現像してASA3200とかで使ったり。リバーサルではコダクローム25というASA25という超微粒子フイルムもありましたね。つまり、暗い所(明るいパーティ会場とか)でもストロボを使わざるを得なかったのです。
※ASAは当時のフイルム感度(American Standard Association)。数値はISOと同じです。
現代はISO12800でも「常用感度」と言われ、夜のキャンプですら写ってしまいます。
ストロボの光は強く、固く、雰囲気や表情をぶち壊すことが多いため、きれいに写る状況ならあまり使いたくないところです。それでもストロボを使うというのは
- とにかく暗い。しかも集合写真など、絞り込んで被写界深度を深くしなければならない。きれいに撮るためにISOもあまり高くしたくない。
- 動きを止めたい。
- 逆光などで明るさのバランスを取りたい。
特に3番が多いのではないかと思います。
そこで求められるのが
- 太陽光に負けない大光量。
- ハイスピードシンクロ(日中シンクロ)機能。
- 手軽に使えるワイヤレス機能・マルチストロボ機能。
- 光質を調整できるアクセサリーの充実。
ですね。
調べれば調べるほど、GODOX V1はこれらの条件を満たしています。特にマルチストロボにしようとすると、価格の安さも重要条件になってきます。
開封。
なかなか見た目良さげなシロモノです。折り畳み式ディフューザー・手袋等は別の袋で一緒に梱包されてきました。X2Tは後日頼んだのですが、一緒に撮影。
GODOX V1の特長。
- バッテリーは充電式。フル充電で480回のフル発光が可能とのこと。バッテリーチャージャーはUSB-C接続。
- ガイドナンバーは記載なし。「76Wsの出力でV860 IIとほぼ同等の光量」とのことなのでGN60(200mm・ISO100)と思われます。昔の基準だと「ISO100 35mm GN36」ぐらいかなあ?
- ズームに連動。広角側は28mmまで対応。
- ヘッドは上下左右に動きます。
- キヤノン・ニコン・ソニー・ペンタックス・オリンパス・富士フイルム用がラインナップされています。各社TTL制御に対応。
- ラウンドヘッド。Profoto A1のパクリと言われたアレです。配光の美しさに効果があるとのこと。
- ハイスピードシンクロがとてつもなくかんたん!1ボタンでハイスピードシンクロに切り替えられるスピードライトを他に知りません。
- アクセサリーが充実。丸形ヘッドライトに磁石が仕込まれていて、ディフューザー等をワンタッチで取り付けられます。
- GODOX独自の「Xワイヤレスシステム」で、電波式ワイヤレスで発光量のTTL制御が可能。各社用モデルを混ぜても制御可能←ココがポイント!
- 機能豊富で高品質なのに3万円台と激安!
ハイスピードシンクロ。
ストロボの発光時間は1/1000〜1/40000秒と実に一瞬です。
対してカメラのシャッターがセンサー面を走り抜けるのにかかる時間は、機種によりますが1/45〜/250秒程度かかります。高級機ほど速いと考えて良いでしょう。
- まず先幕が開く。センサーに光が当たり始めます。
- センサー面が全開になる。
- 後幕が閉じる。
2の段階でストロボが光らないといけません。シャッター幕が走っている最中に光ると、ストロボ光が当たらない部分ができてしまいますからね。
この「センサー面が全開になる」タイミングを作れるシャッタースピードが、一般的には1/60秒以下ということです。これより速いシャッタースピード(1/2000秒とか)では先幕と後幕がスリットを作って走行します。全開時間は無くなるわけです。
ではシャッタースピード1/8000秒でもストロボが使える「ハイスピードシンクロ」とは何でしょう?
単純に説明すると、先幕走行開始から後幕走行終了まで、何回もストロボが光ってずーっと光っている状態を無理矢理作り出す機能です。詳しくはコチラが分かりやすいです。
https://genkosha.pictures/photo/19030720745
GODOX V1はハイパワーなので、明るい場所でもハイスピードシンクロ機能を安心して使えます。
写真はとしまえん。ウェディングドレスの前撮りです。EOS RにRF50mm F1.2L USM。ISO100・1/6000秒・F1.2の完全逆光で、GODOX V1-Cをクリップオンでハイスピードシンクロさせました。
カメラの設定。
ぽちろくでは通常、Avモード/ISOオートでEOS Rを使っています。
そこにGODOX V1をセットすると、通常のストロボ発光ではストロボシンクロ速度にシャッタースピードが自動設定されます。絞りは設定値のままISOが変化し、暗い場所では背景も(そこそこ)明るく写ります。
さて、明るい場所でハイスピードシンクロをオン!
Avモードなので絞りは設定値です。ISOは低めに推移し、それでもシャッタースピードは高速になります。上の例では1/6000ですね。そしてストロボ発光!
これだけ。
拍子抜けするほどかんたんにハイスピードシンクロによる日中シンクロが使えます。
操作部。
ボタンがたくさんあります!これほど多いのは珍しいのでは?しかも説明書きが全然無い(^_^;
詳しい説明は説明書を見ていただくのが良いと思いますが、よく使うポイントだけ。
- 他の機器と通信する時は①でグループとチャンネルを合わせます。
- ②はマスター/シングルとスレーブの切り替え。これが1ボタンなのも便利です。スレーブに設定すると液晶がオレンジ色になり、一目瞭然です。
- ③がハイスピードシンクロ・先幕シンクロ・後幕シンクロの切り替えボタン。超絶便利!
よく使う機能が1ボタンなのは本当に嬉しいです。
問題は、センターダイヤルが異様に軽いこと。押すのも回すのも軽くて速くて。こういう「操作感」ってお金がかかるとこなんですよね。使用時は、勝手に設定が変わっていないか確認しましょう。
GODOX X2T-Cとは?
「GODOX X2T」が機種名、「-C」はキヤノン用です。TはTransmitterの頭文字でしょう。
カメラと通信してE-TTLで決定したストロボの発光量をスレーブ(奴隷/遠隔操作される側)に送信するマスターユニットです。
カタログやネットだと小さく見えますが、カメラに装着するとこのサイズ!ボタンと、ホットシュー側のダイヤルで操作します。
こちらは充電式バッテリーではなく単三電池を使用します。ちょっと残念。やはり乾電池の呪縛は続くなあ。
GODOX X1R-Cとは?
「GODOX X1R」が機種名、「-C」はキヤノン用です。Rは(たぶん)Recieverの頭文字です。
「Xワイヤレス」で受信した信号で、上面ホットシューに接続されたストロボを制御します。なので、X1R自体はホットシューではなく接点の無いアクセサリーシューになっています。また1/4ネジ穴も開いています。
アクセサリーシュー又はネジ穴で三脚やストロボスタンドに設置して使います。もちろんアシスタントに持ってもらってもOK。
V1-CのスレーブとしてV1-Sは使えるのか?
「すごいぞGODOX V1!」「α7IIIも使っているし、バッテリーが共用できて便利!」・・・というだけではV1を2台買う理由には弱いです。
「ソニー用V1をキヤノン用(V1やX2T)のスレーブに使えるだろうか?」
まずは発売元のケンコープロフェッショナルに質問してみました。「使えますか?」
「もちろん使えます。」
あまりにアッサリした回答に「この担当、質問の意味分かってるのかなあ?(とても失礼w)」とますます疑心暗鬼に。カタログももらってきて熟読しましたが、どこにもそんなこと書いてないです。そこで勝手に想像してみました。
- 発光量の制御はカメラのTTLシステムが行っている。
- マスター/スレーブの通信はXワイヤレスシステムが行っている。
- 発光量が決まれば、スレーブ側は制御信号を受け取って発光部を制御するだけ。
- そもそも「各メーカー用」というのはホットシュー〜カメラとの通信部だけだよな?
うん、イケるんじゃないか?
ということでまたまたエイヤッとGODOX V1-S(ソニー用)を購入。ダメでもα7III用に使えるし、予備バッテリーとしても価値あるし!
動いたー!
グループとチャンネルを合わせて、意図通りの発光量であることを確認できました。
Xワイヤレスシステムの考え方を独自に整理してみました。
使用機材は以下の通りです。
- V1-Cはメインストロボ。EOS Rで主に使います。
- V1-Sはα7III用。α7IIIは遊びにしか使わないのですが、バッテリー共用やスレーブ利用できることもあってV1にしました。
- X2T-CはキヤノンE-TTL用のリモートコマンダーです。X1Tの後継機?X1Proの廉価版?どれも価格はあまり変わらないし、機能差もよく分からないので、Proにしても良かったかも。上面にホットシューがあり、キヤノン用ストロボを装着できます。TTL信号はスルーと思われます。
- X1R-Cはキヤノン用ストロボをXワイヤレスシステムで使えるようにするスレーブユニット/レシーバーです。X1の名前が付いていますがX2Tでも問題無く動作します。
ここからはあくまでぽちろぐの解釈です。
- V1-CはEOS Rと通信してE-TTL制御されます。
- 制御信号はXワイヤレスシステムに渡されます。
- Xワイヤレスシステム制御部から、自身の発光部とスレーブユニットが制御されます。
- V1-CはEOS Rと通信してE-TTL制御されます。
- 制御信号はXワイヤレスシステムに渡されます。この部分は各メーカー用で共通と思われます。
- Xワイヤレスシステム制御部から、自身の発光部とスレーブのV1-Sが制御され、V1-Sの発光部が制御されます。
- コマンダーをV1-CからX2T-Cに変更。
- 電波到達距離はV1-Cをマスター/コマンダーに使った場合が30m、X2Tでは100mです。
- 日中シンクロでハイスピードシンクロを使用する場合、X2Tでハイスピードシンクロを設定します。残念ながらこれは1ボタンとはいかず、メニューから選ぶ必要があります。
通常は2台、3台よりも多い多灯撮影はなかなか無いでしょうね。もちろん3台全部V1にしても良いです。マスター/コマンダーにV1をクリップオンで使用するならX2Tは不要で、よりシンプルなシステムが構築できます。私は20年?近く使っている430EXがあったため、このような構成になりました。
GODOX AD200OPro、AD400Proといったモノブロックタイプには、そもそもキヤノン用・ソニー用といった区別がありません。カメラとの通信部を無くして、XワイヤレスシステムでXPro、X1T、X2Tといったコマンダーからの信号を受け取っています。それでTTL制御できるのですね。
アクセサリーの話。
GODOX V1の弱点として、カバーする広角側画角の狭さがあります。28mmって・・(T_T また光の質を柔らかくしたりコントロールする必要がある場面も多いでしょう。
GODOX V1には専用のマグネット取付式アダプター「GODOX AK-R1フラッシュヘッドアクセサリーキット」があります。
最も使うのはドームディフューザー、光量減少を避けたい時は円形ディフューザー(ワイドパネル)でしょう。アイキャッチ用バウンスカードもあります。ハニカムやリフレクター、スポット用チューブなど、普通は触ることの無いアクセサリーもセットになっています。
ドームディフューザーがカバーする画角については、ケンコープロフェッショナルのサイトにも説明はありませんでした。かんたんに試写してみたところ、20mmでも周辺の減光は見られませんでした。一般的な16mm始まりの超広角ズームでも問題なさそうです。
円形ディフューザーも、20mmで集合写真を撮って大丈夫でした。
セットはお得ですが、ドームディフューザー単品で買っても良いかも。セットには専用ケースが付属するのですが、あまりにもコンパクトで収納しにくいのです。
昔話。
キヤノンF-1(改)を使っていた1970年代のお話です。
- そもそもTTL制御ストロボというものは無くて、良くてもストロボ自体に反射式の受光部がある自動露出でした。
- キヤノンF-1(改)にはホットシューが無く、クリップオンストロボを使うにはフイルム巻き上げレバー外周ソケットに装着する「ホットシューアダプター」が必要でした。
- 私が使っていたのはグリップ式のNational PE-5651N。ガイドナンバーがASA100/35mmで56という大光量で、オプションでリモートセンサーを使えました。電源は外部電池パック!リサイクルタイムが速いため積層電池パックを使っていたのですが、おかげで現在は使えません。※画像は拾い物です。
- マニュアルで使う時は、シャッタースピードを1/60秒(X)に設定、ピントを合わせて距離目盛を読み取り、ガイドナンバー÷距離(m)で絞り値を決定。という流れでした。
- 当時のストロボにはASA(今のISO)と距離、絞り値の換算表が円形ダイヤルで付いていました。
「はーい、行きますよ〜」ピントを合わせて計算して「ちょっと待ってね」。なんとのどかな時代だったことか。
その後オートストロボが当然になり、TTLになり、と時代は進んだものです。
ところでそれより前は「フラッシュバルブ」の時代でしたね。一発撮るごとに発光球を取り替えなくてはいけないやつ。高熱を持っているのでうっかり触ると火傷します。撮影どころじゃなくなります。子どもがいたずらしないように管理も大変です。フラッシュバルブは「シャッター走行時間より発光時間が長いため、高速シャッターでも使える」という特性がありました。大光量でもあり、当分は「日中シンクロはフラッシュバルブ」だったように思います。
まとめ。
もう少し作例を多くしたかったのですが、天気その他で間に合わず。後日追加します。
実際に購入して試したところ、「これは買いだ!」と断言できます。
- 日中でも使える十分な光量。
- 想像した以上にスタミナがある充電式バッテリー。
- とても融通が利く電波式のXワイヤレスシステム。
- 頻繁に切り替えたい機能が1ボタンでOK。
まずはクリップオン+ドームディフューザーで使ってみませんか?
リモートで使うにはストロボスタンドも必要。
ところで、ストロボをカメラから離して設置するにはスタンドも必要です。
これは
- 日中シンクロ
- ハイスピードシンクロ
- リモート(スレーブ)発光
- アンブレラ
と、てんこ盛り設定です。
ストロボはV1-S(ソニー用)、カメラはこちら。EOS RにX2T-C(キヤノン用)を取り付け、ハイスピードシンクロ設定しました。
ストロボスタンドはこちら。例によってK&F Conceptさんが提供してくれました。いやあ、ウェディングフォト撮影ではめちゃくちゃ助かりました!
オフィシャルサイト
https://www.kentfaith.co.jp/KF34.009/?tracking=5db2b1ddb0de4_5
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「三脚でも良いじゃん!」と思った方、正解です。三脚ならばカメラも取り付けられるし、いろいろと応用が効きます。しかしストロボスタンドのメリットは
- 圧倒的に軽い。884gと、ミニ三脚並みの軽さです。
- それなのに高い!2m近くまで伸びます。三脚でこの高さとなると大型三脚で、重量も価格も相当な物になります。
- フットプリント(脚を広げた時の面積)が小さい。安定性とのトレードオフですが、カメラ三脚ほどの安定性は求められないため、これもストロボスタンドを使うメリットです。
- そして安い。5649円と格安です。必要な本数を気兼ねなく揃えられます。
そしてK&F Concept KF34.009の良いところは
先端が1/4ネジとロック式の両方が使えるようになっている。アンブレラホルダー等をここに取り付けます。1/4ネジでも良いのですが、かぶせ&ロック式だとなおさら安定します。
アンブレラホルダーとはこのような物で、丸い穴にアンブレラの軸を通してネジ留めします。
ストロボスタンドへの装着は1/4ネジも使えますが
ネジ部分(銀色)を取り外してスタンドホルダーのネックに深く挿した方が安定します。
アクセサリーシュー部分は固定式がお勧め。調整ネジの付いたモデルがよくありますが、あれ、固定能力が全く無いめた無意味です。
重りを吊り下げるフックが付いています。
同社三脚と同じ反転式で、収納時とてもコンパクトに収まります。
そして例によって「この値段でこんなに立派なのが付いていて良いの!?」と思うほどのケースが付属します。
ストロボだけでなく、レフ板を固定するにも手軽です。
アシスタントがいる時は良いのですが、カメラマン一人で撮影となると「荷物の軽さは正義」です。私は2本使っていますが、せめて1本あると便利ですよ。
あ!!!屋外でアンブレラを使う時は、くれぐれも風に注意してください。意外なほど弱い風でも倒れます。これはストロボスタンド・三脚に限らずです。私は以前やらかしたことがあります(^_^;
この記事は2020/03/28に公開され2024/01/21に更新、942 views読まれました。