ピント位置と絞りと被写界深度の話。
2015年11月18日
ぶれない・ボケないが基本ですが
写真を撮る時に気にすることを列記してみます。
- カメラをうまく固定してブレないように撮る。長時間露光なら三脚は必須。手持ちならたとえ明るい場所でも脇をしっかり締め、できれば肘をつくと良い。
- 人物なら瞳にピントを合わせる。その他の場合「何が主題か?」を考えてピントを調整する。
- ピントを合わせたい範囲を考え、絞りを変えて被写界深度を調節する。絞る(f値を大きくする)と暗くなり、被写界深度は大きくなる。
- 子どもやダンサー、ペットなど動くものが被写体の場合、手ブレだけでなく被写体ブレも考慮してシャッタースピードを調節する。シャッタースピードを速くすると暗くなる。
- 上記の絞りとシャッタースピードを絞る&速くすると、露光感度(ISO)を高い値にしなければならない。高感度ISOでは画質がざらつきやすい。
- どこからどこまでを撮るか?どのように切り取るかを考える。
- 自分の立ち位置を変えてみる。高くなったり低くなったりして写り方の違いを確かめる。
- どのレンズを使うか考える。広く撮りたいか、遠くの物を大きく写したいか?広く撮るなら広角、大きく撮るなら望遠レンズを使う。ズームレンズなら両方撮れるが、一般に画質は落ちるし、f値が大きくて暗い物が多い。
- 究極の画質を望むなら単焦点レンズを選ぶ。しかし便利ズームと違って大きく重い。しかも価格が高い。
- レンズによって色味やボケ方、解像度、歪曲等が違う。同じスペックのレンズでも異なる。何を重要視するか?
- 近寄れる距離はレンズ毎に異なる。「レンズ前面1cmまで接写可能!」なんてのはコンパクトカメラの独壇場。これは画質をあまり気にしないで利便性を優先したからできること。どこまで近寄りたいかを想定してレンズ選択。
あー、めんどくせえ!
本当はもっとたくさんのことを考えて機材を選択、撮影に臨んでいます。ストロボ等の照明機材を使う場合はさらに面倒です。
こんな話を書いたところで「被写界深度って何?」「絞りってよく分からない」「シャッタースピード速いのがいいなら速くすればいいじゃん」「ISOって何?」と、入口手前でつまづくのが関の山です。画質にいたっては使用サイズによっても評価が違ってくるので、なんともはやです。
そこで実例
コンクリート塀を35mmレンズ(準広角)開放で撮りました。f値は2.4。
手前から2列目にピントを合わせています。前後がなだらかにボケて立体感があります。
同じところを同じレンズで、f値だけ11ぐらいにしてみました。
奥のコーンキャップまでピントが合っているように見えます(正確には違いますが)。スマホで撮ると、だいたいこんな感じになります。
スマホで上のようなボケた写真を撮る(実はスマホ内部で画像処理している)と、もっと不自然な仕上がりになります。「ミニチュア」とか「ジオラマ」とか呼ばれるモードですね。
こちらも開放です。
実はこの写真、花芯にピントを合わせたのですが、フルサイズに拡大して見ると被写界深度が浅過ぎ(狭すぎ)てピリっとしません。
そこでこちらは少し絞りを小さく(f5.6ぐらい)して被写界深度を深く(広く)してみました。
ピリッとしましたが、後ろのボケ方は上の方が良いですね。カッチリ写ってますよ?というだけな感じが。
次はこちら、大変小さな花です。ここまで近づくと、被写界深度はめちゃくちゃ浅くなります。
中央の花の花芯にピントを合わせました。花弁の先はボケボケで、不思議な感じがします。
次に花芯に向かう色の濃い部分にピントを合わせ、少し絞りました。
全体がハッキリとキレイに写りました。これはこれでありだけど「きれいね〜」で終わりですね。上の写真のように幻想的な感じはしません。
こちらはブロッコリー畑です。
少し絞ってピントが合って見える範囲を広くしました。
このようなシーンでは、伝えたいことによってどちらが良いかは一概に決められません。
ピント位置・絞りの変更による被写界深度の変化。実例で分かっていただけますか?
ボケを活かすにはピント位置がハッキリしていること!
全部がボケた写真じゃ、幻想的以前です(^_^;
そしてブレないためにカメラをしっかりと固定して、シャッターボタンは優しく押しきりましょう。「ぽんっ」とはねるようにシャッターを押すのは厳禁です。
カメラを[A](フルオート)や[P](プログラム)ではなく[A](絞り優先AE)モードにして、できれば同じ被写体を絞り値を変えて何枚か撮ると良いでしょう。
独自の用語が理解を阻害する
- シャッターを切る。
- ISO感度。昔はASAと言った。
- 被写界深度を浅くする。
- 三点支持。
- 標準レンズ・広角レンズ・望遠レンズ、基準は何?
- レンズの味、切れ味とかボケが良いとか。
ただでさえ要件が多いのに、用語でつまずくと先に進みにくいですよね。
それでもきちんと理解して考えて撮ると、スマホとはまったく別物の写真が撮れるので楽しいですよ。
ファインダー付きのカメラにしよう
EVFでもOVFでも、ファインダーがあるカメラをお勧めします。
EVFはElectric View Finderの頭文字。小さなモニタを接眼レンズ越しに覗くタイプです。ファインダー付きのミラーレスカメラはだいたいこれです。カメラのセンサーが撮している画像をカメラ内のコンピュータが処理して見せているので、最終的に撮れる写真とほぼ同一のものになります。
OVFはOptical〜の頭文字です。レンズを通った光をミラーとペンタプリズムでファインダーに迂回させて見ます。撮影時には一瞬だけミラーを跳ね上げて光をセンサーに通します。EVFと異なり、被写界深度やコンピュータ処理後の画質を確認しにくくなっています。しかしコンピュータ処理を通さないために被写体の動きとファインダーで見える映像にタイムラグが無く、動体の撮影ではEVF搭載カメラに圧勝です。
私がライブ撮影で一眼レフ(ミラーレスでは無い・OVFのカメラ)を使うのは、このタイムラグの小ささが最大の理由です。
対してじっくりと撮りたい時はEVFの方が良いこともあります。いちいち撮ってから背面モニタで再生・確認しなくても、リアルタイムに絞り値の変更による被写界深度の変化・ボケ具合を確認できるからです。
じっくり撮る派はEVF(ミラーレス)、動くものを撮るのがメインならOVF(一眼レフ)にすれば良いでしょう。
ファインダー付きのカメラはいずれも以下のメリットがあります。
- 顔・両手の三点支持でカメラをしっかりと固定でき、手ブレが減る。
- ファインダーを覗くことで撮影に集中できる。
- 背面モニタと違い視度調整ができる。老眼には必須の機能!
- 背面モニタと違い、まぶしい場所でも見えにくくなることが無い。
よほど「とにかく小さいカメラにしたい!」という理由が無い限り、ファインダー付きのカメラを選ぶようにした方が良いでしょう。
あまりに多すぎる要件だけど
ライブ撮影時の機材は以下に集約しています。
- EOS 7D MkII
- EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM
- EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM
これだけ。予備としてX7にEF-S24mm F2.8 STMを付けて持って行きます。つい先日まではEOS 7D MkIIの替わりにEOS 8000Dを使っていました。ふつうはEOS 8000Dで十分です!画素数にいたっては(ちょっとだけど)8000Dの方が多いし!
ライブ撮影ではじっくりピントを合わせている時間もないので、AF機能が優秀なカメラを選びます。被写界深度を試している余裕なんてますます無いので、長年の勘で「今日は5.6で行こう!」とか決めちゃいます。
レンズもあまり交換している時間が無いので、高倍率ズームをメインに超広角ズームを持って行きます。結局、超広角ズームをメインに使うことの方が多いのですけどね(^_^;
こんな角度と距離で撮ることが多い人には超広角ズームお勧めですが、あまりいないだろうなあ?
友人と「撮影ハイキング」に行くこともあります。
そんな時は単焦点レンズを一本だけ持っていきます。たくさん歩くので重い機材はいやだし、時間に縛られないので、ズームする替わりに自分が動きます。大きく撮りたければ近づき、広く撮りたければ離れます。
要求に応えてくれるレンズは35-50mm程度の標準レンズです。明るくて(f値が小さい)近寄れるレンズなら言うこと無しです。
理想としてはコシナが出しているツァイス・マクロプラナー50mm F2というのがあるのですが、12万円前後。なかなか手が出せません。しかもめちゃくちゃ大きくて重いです。古いレンズだとオリンパスが50mm F2マクロを出していました。こちらは5万円前後。しかしオークションでは安いかわりに状態が分からないし、店頭にはなかなか出てこず入手できません。
現在は以下の機材を使うことが多いです。
- α7
- Industar 61 50mm F2.8またはFlektogon 35mm F2.4のいずれか
レンズはどちらも1/3倍程度まで大きく写せるマクロレンズです。発色も好みです。古いレンズですが市場にたくさん出回っていて価格もあまり高くありません。
単焦点レンズ一本でいろいろなものを一日じっくり撮って回ると、とても勉強になりますよ。楽しいし、運動にもなるし(^_^;
本気で写真の勉強をしたいなら
ここはあえて「EVF付きミラーレスカメラ」と「マニュアルフォーカスレンズ」をお勧めしておきます。
私はオールドレンズを使っていますが、マニュアルフォーカスレンズは現在もたくさんあります。
- EVFなので、絞りの変更に対する写り方の変化をリアルタイムで確認でき、理解が早くなる。
- マニュアルフォーカスで「ピントとは?」に対する理解が深まる。
他の要件は一眼レフを使っても同じです。
マイクロフォーサーズならオリンパスのOM-D E-M10(最近マーク2になりました)あたりですね。初代は早々に店頭から姿を消したようですが、中古で良ければ半額以下です。
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レンズはNOKTON 25mm F0.95・・・だと高いなあ。古い24mmレンズにマウントアダプターを付けた方が良さそうです。
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APS-Cの「一眼レフスタイル・ミラーレス」はフジフイルムですね。まったく個人的な趣味嗜好で、ソニーの「レンジファインダースタイル・ミラーレス」はお勧めしません。
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こちらはXマウントのマニュアルレンズが見つからず。マウントアダプター+24-35mm程度の古いレンズを取り付けると良いでしょう。
フルサイズならα7シリーズ。バランス的にはα7IIがベストと思います。古いレンズを取り付けても有効なボディ内5軸手ぶれ補正を内蔵しています。
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無印α7なら11万円台から購入可能なようです。
Eマウントの標準マクロは出ていないので、あきらめてカールツァイスかな?このレンズ、50cmまで寄れないのが残念です。それ以外は素晴らしいです。
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Industarをマウントアダプター経由で取り付ければ2万円以下で入手可能ですが、オークションで勝負をかけるか、中古カメラ屋さんをじっくりと回らなければなりません。
もちろん、純正AFレンズをマニュアルフォーカスモードにして使うというのもありです。
しかし一度、店頭ででもマニュアルレンズに触れてください。フォーカスリングの感触の差にビックリします。AFレンズのマニュアルフォーカスは「バイワイヤ」と言って、フォーカスリングをスイッチとしたモーター駆動なのでタイムラグや「アソビ」があるのです。
本来のマニュアルフォーカスレンズの感触は、一度触ると病みつきですよ(^_^;
こんな面倒くさいことを覚えて、でもカメラオタクにはならずに良い写真をいっぱい撮れるようになりましょう〜(^_^ /
この記事は2015/11/18に公開され、45 views読まれました。