入手しやすいオールドレンズ10本撮り比べ、好きなレンズはどれ?
2016年01月07日
たまりに貯まったオールドレンズ、描写の違いは?
エントリーは以下の11本です。
- LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8(ロシア・テッサータイプ)
- LZOS INDUSTAR 50-2 50mm/F3.5(ロシア・テッサータイプ)
- Jupiter-9 85mm F2(ロシア・ゾナータイプ)
- Carl Zeiss JENA Flektogon 2.4/35(東独・レトロフォーカスタイプ)
- Carl Zeiss JENA Tessar 2.8/50(東独・テッサータイプ)
- Super Takumar 50mm F1.4(日本・変型ガウスタイプ)
- ヤシカContax Tessar 2.8/45 T*(日本・テッサータイプ)
- ヤシカContax Planar 1.4/50 T*(日本・プラナータイプ)
- ヤシカContax Planar 1.4/85 T*(日本・プラナータイプ)
- ミノルタMD 50mm F1.4(日本・変型ガウスタイプ)
- 参考:EF-S24mm F2.8 STM(日本・テッサー拡張タイプ)
カメラはα7、各レンズともマウントアダプターを経由して取り付けました。
35mm1本、45-55mm7本、85mm2本と「馬鹿じゃないかしら?」な状態なので、ここでいっちょ白黒つけてしまおうというわけです。それぞれ使い勝手やデザインに愛着はあるのですが、今回は描写の違いを追求します。
- カメラは三脚にセットし、モデルは動かないようにスツールにまたがってもらいました。
- 絞りは開放からF5.6まで1段ずつ変更しました。特にポートレートでの使用を意識したテストですので、これ以上絞る必要はないとの判断です。
- ISOは200に固定しました。
- RAWで撮影しLightroomでホワイトバランスだけ揃えて他はデフォルトで現像しました。
- ホワイトバランスを固定するのを忘れたので、RAW現像時に5500゜Kに一括変更しました。オートWBでは4000〜6500とバラバラになりました。色温度が違うとまったく違う印象になってしまいます。
- 背景はボケの様子が分かりやすいように落ち葉にしました。
- 85mmレンズ2本のみ、三脚を移動しました。
- 作例はフルサイズ、最高品質のJPEGです。サムネイルをクリックして拡大し「ダウンロード」を押すとLightboxを解除して表示されます。ドラッグ&ドロップ等で保存できます。気になるレンズの作例を、ピクセル等倍で確認できます。
- 評価は「ピクセル等倍表示」を主としています。実際にはプリントや縮小表示することが多いので、特に「オールドレンズの味」を語る場合にはここでの評価は絶対的なものではありません。
モデルはダンサーのyukiちゃんに協力してもらいました。サザンオールスターズのトリビュートバンド「いとしのエリーズ」ライブで会えますよ。
LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8
現在、私の一番のお気に入りです。まず、デザインがイイ(^_^; 素っ気ないストレート鏡胴、レンズ先端のノンクリック絞りの使いやすさ、なにより、短い最短撮影距離は「なんでも撮れます」!
F2.8
F4
F5.6
F2.8と明るさを欲張っていないにもかかわらず、開放ではかなり甘い描写です。肌理がやさしく見えます。瞳や睫毛を強く見せたい時には不向きかもしれません。F4にするとグッとシャープになります。
ボケは穏やかで自然。50mmと銘打っていますが実際には55mmぐらいの焦点距離です。しかしF2.8、ボケ量は期待できませんね。
この作例には現れていませんが、F5.6付近で光源のボケが「ダビデの星」型になるというオマケ付きレンズです。
Super Takumar 50mm F1.4
やっと試写できました。たいへん状態の良い物を譲っていただきました。「オールドレンズ」「M42マウント」というと、国産ではこのレンズとF1.8モデルが真っ先に上がります。
至極真っ当なスペックで、最短撮影距離は45cm。造りの良さはピカイチです。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F2.8まではかなり強い周辺減光があり、おかげでモデルが引き立つように思います。
F1.4は甘いですが繊細さがあり、F5.6までその繊細さは失われていないように思います。「カリカリ」ではないけれど、線の細い解像感があるといった感じです。
ボケは開放だとグルグルしてうるさいですね(^_^; 「オールドレンズらしさ」をとても感じるレンズです。
LZOS INDUSTAR 50-2 50mm/F3.5
とにかく小さい!500円玉とよく言われますが、小さめのマカロン半身ぐらいかな?F3.5と暗く、最短撮影距離も65cmと遠いので使い勝手は悪そうですが、私はヘイリコイド付きマウントアダプターに取り付けていい具合に使っています。
とにかくテッサータイプのレンズが欲しくて、Industar 61が良かったので手を出してしまったレンズです。
F3.5
F4
F5.6
その小ささからは想像しにくい、落ち着いた描写をしてくれますね。61よりも繊細な感じもします。
Carl Zeiss JENA Flektogon 2.4/35
私が買ったオールドレンズでは最高値(それでも2万円程度)です。18cm前後まで寄れる近接撮影能力もあり、たいへん評判の良いレンズです。
F2.4
F4
F5.6
35mmといいながら、実質37〜38mm程度のようです。後に掲載するEF-S24mm(APS-C用なのでクロップされて36mm相当)よりも画角が狭くなっています。おかげでお散歩レンズとして使いやすく感じます。
評判通り実にシャープで、睫毛の描写もまったく乱れません。立体感も感じられ、万能レンズに思います。
Carl Zeiss JENA Tessar 2.8/50
「ロシアンコピーでは無いテッサーが欲しい!」と購入したレンズです。表記はIndustarと同一ですが、実焦点距離はかなり違います。こちらが正しいのでしょう。
F2.8
F4
F5.6
絞りの変化に伴う画質の変化が少ないことに驚きます。肌理はやさしく表現され、カリカリではありませんが十分な解像感を感じます。
これは優等生だなあ。
ミノルタMD 50mm F1.4
「α7買っちゃった!ルンルン!」な状態で、まずは買ってみたオールドレンズ第1号です。F1.4だしお手頃価格だし玉数も多くて入手しやすいし、評判も良いようです。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F4から突如シャープ・カリカリになります。表現は硬い感じ。開放では、あまり使いたくないほど甘くなります。目元はシャープに、肌は柔らかく、なんて表現にはなりません。
開放でのボケも少々クセが強いです。
うーん、これは私には合わなかったなあ。
ヤシカContax Tessar 2.8/45 T*
ヤシカコンタックスRTSの頃に発売されたパンケーキレンズ。今でも「パンケーキ」と言えばLT8Eかこのレンズを思い浮かべるでしょう(^_^ /
ただし小さすぎて使いにくいです。最短撮影距離も遠いし。絞りリングとフォーカスリングの判別もしにくいです。しかし!
F2.8
F4
F5.6
周辺減光はパンケーキなりに大きいのですが、何ですか?このシャープさは?!空気感も抜群です。
シャープで解像感も高いけれど、肌理の描写が硬くなったりしません。ボケは大きくありませんが、素直なボケ方をしています。ぜひ開放で使いたいですね。
今回使ったテッサータイプは4本ありますが、ピカイチです。
しかし使いにくいんだよなあ。本当に操作しにくい。悩ましいところです。
ヤシカContax Planar 1.4/50 T*
ツァイスと言えば、いつの時代も「プラナー1.4!」と神聖視されるこのレンズ、実は過去に使ってあまり良い印象を持っていませんでした。
当時EOSに取り付けていたのですが、マウントアダプターの精度がひどくガタガタで使いにくかったこと。1段絞らないと黒が締まらないことがその理由でした。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
ごめんなさい、上記はまったくの勘違いでした。開放からシャープで、1段絞るとますますカリッとして黒も締まります。肌が呼吸しているような気もするほどに質感描写してくれます。F5.6まで絞っても硬くなることがありません。
他のレンズと同様のセッティングで撮っているのに、他が全部ブレているように見えるほどシャープです。
ボケはF2のボケ味が好きです。量的にはF1.4ですが、開放だとボケが少しあばれている気がします。
私が借りているプラナーは保存状態があまり良くなく、描写よりも操作性に難があります。リングのゴムがへたれているとか。借り物なので修理というわけにもいかず。程度の良い物が欲しくなってしまいます。
ヤシカContax Planar 1.4/85 T*
ここから中望遠なので、三脚位置を変えました。
覗いただけで分かるシャープさ!
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
開放こそ少し柔らかい表現ですが、F2からはキリっとシャープになります。しかし肌の表現には軟らかさがずっと残っています。
ボケは50mmとはまったく違いますね。背景説明をしたいならF2.8以上には絞らないといけませんね。
しかし積極的に開放を使いたくなる描写です。評判はダテではありませんでした。
Jupiter-9 85mm F2
ロシアで作られたゾナーのコピーです。ジュピターともユピテルとも呼ばれるそうです。
このレンズも少々使い方にクセがあります。「プリセット絞り」といって、クリック付きの絞りリングでF値を決め、それとは別の「絞り込みリング」を回して絞り込みを行うのです。要は、開放でピント合わせ〜素早く設定絞り値まで絞り込みという使い方なのですね。
この絞り込みリングがフォーカスリングと極端に近接しているために操作しにくいのです。ミラーレスカメラでは絞りリングはF22最小絞りにしたまま、EVFでボケ具合を確認しながら絞り込みリングのみを操作しますので、位置関係が逆なら使いやすかったのですが。
F2
F2.8
F4
F5.6
F2開放では限りなく甘く、まるでソフトフォーカスです。F4まで絞ると普通にシャープになります。肌の表現はずっと軟らかいままです。
割とコントラストはきつめのレンズですね。
F2で盛大にザワついているボケはF2.8で一気に穏やかになっています。
使いこなしは難しそうですが、オールドレンズらしいといえば言えますね。
参考:EF-S24mm F2.8 STM
APS-C用なので自動クロップされて36mm相当になります。35mmレンズでも保っていれば良かったのですが、EF35mm F2 IS USMは売却してしまったので(^_^;
最新レンズ代表としてエントリーしてみました。EOS Kiss X7との相性は抜群。色乗りも良くコントラストが高くシャープです。しかも小さい!
マニュアルフォーカスで使うには、STMはフォーカスリングの回転とピントの移動に微妙なズレを感じるため、実用にはお勧めしません。
F2.8
F4
F5.6
36mm相当のはずなのに、Flektogon 35mmよりも画角が広い(^_^; Flektogonの実焦点距離がアバウトなようですね。
実焦点距離が24mmなので、ボケはまったく期待できません。
描写は超・優等生です。シャープ・黒も締まり色乗りも良い。EOS Kiss X7との組み合わせばかり推してきましたが、α7に取り付けても立派な描写をしてくれます。EXiF情報を記録してくれるのも◎です。
もうちょっとキラキラの作例
各焦点距離域で代表を3本選んで、もう少しキラキラの作例を撮ってみました。
Carl Zeiss JENA Flektogon 2.4/35
Super Takumar 50mm F1.4
ヤシカContax Planar 1.4/85 T*
yukiちゃんがだいたい同じ大きさに写るようにしました。
背景の圧縮効果の違いがよく分かると思います。85mmはさすがにモデルが引き立ちますね。
しかし50mmもF1.4とあって、それほど負けてはいません。自然な遠近感は好ましいシーンもありそうです。Super Takumarは、色温度を同一にしてみて分かったのですが、少し黄色に転ぶように見えます。
35mmはお茶目な感じがします。子どもを撮るにはこちらの方が向いているかも。
どのレンズも舞上げた枯葉をしかっりと解像しています。
さて、半逆光をSuper Takumarで一枚。
最新レンズとの比較をすべきでしたが、比較対処が無くても分かる明らかなコントラスト低下が見られます。全体に色が浅く、オールドレンズらしさを出すには、あえてこんなシーンも良いかもしれません。
これはコーティングの差なのでしょうかね?
夜のシーンをSuper Takumarで一枚。
ISO2000まで上げています。逆光時と異なり、コントラストの低下は見られません。絶対的に光量が足りないためシャープには見えませんが、最新カメラで撮っても大した差は無いかなあ?気になるのはボケで、玉ボケの輪郭がはっきりとフチ取りされています。
総論
画質的にはヤシコン・ツァイス圧勝でした。実はCarl Zeiss JENA Tessar 2.8/50に多大な期待をしていたのですが、完全に裏切られました。
しかしヤシコン・ツァイスは操作性・携帯性がイマイチです。プラナー85mmなど、とうていバッグに入れて持ち運ぶ気にはなりません。作りも少々デリケートな感じがするし。
実際に常用レンズを決めるには、操作性・携帯性・最短撮影距離・明るさ等、さまざまな要素がからんできます。今回は画質比較ということで。
しかしすごいな、ツァイス。最新のツァイスも触ってみたくなりました。
この記事は2016/01/07に公開され、240 views読まれました。
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