フルサイズ最上位機種キヤノンEOS-1Ds Mark IIIレビュー。
2017年08月31日
なぜ今さらEOS-1Ds Mark III?
EOS 7D Mark IIメインのAPS-CシステムからEOS 6D中心のフルサイズシステムに切り替え、かつ、マニュアルフォーカスを多用するようになりました。
こうなると「ガチガチにお堅い機種を使いたいなあ」という気持ちが沸いてきたわけです。そこへヤフオクで「破格の安値なのにまったく入札のないEOS-1Ds Mark III」が登場してあっさりと落札。手元に来てしまったのです(^_^;
2007年発売のEOS-1Ds Mark IIIの詳細は「キヤノンカメラミュージアム」をご覧ください。
http://global.canon/ja/c-museum/product/dslr796.html
EOS-1はフィルム時代に使っていたので、縦グリップ分大きくなっているとはいえ使い慣れたマシンです。
キヤノンはF-1の時代から「喩えそれがベストではなくても、プロ機は操作性を変更してはならない(意訳)」というポリシーがありまして、EOS-1D(無印)からEOS-1D X Mark IIに至るまで根本的な操作において変更がされていません。「大きくなったらEOS-1D Xが欲しいなあ!」と思っていますので(笑うところw)、激安中古機で慣れておくのも良いと思った次第です。
EOS-1Ds Mark IIIなら2110万画素、連写も秒間5コマ、RAW連続撮影12枚と、実用レベルです。AFは19点。マニュアルフォーカスにはありがたいインテリジェントファインダーで、一切のファインダー表示を消すことができます。
貧弱なのは高感度能力ですね。標準でISO1600、拡張で3200まで。現在の基準からすると涙が出ますが、明るい単焦点レンズならば夜間の撮影にも使えます。被写界深度・ボケ具合を考慮しなければ、
- ISO1600、F1.4
- ISO12800、F4
では同じシャッタースピードが切れます。明るい単焦点レンズを使って明るい場所で撮影するのに使うと割り切れば、何の問題もありません。フィルム時代はASA400でも高感度だったんだし(^_^
どうしようもないのは背面液晶モニタ、23万画素。これはあきらめましょう。
EOS-1シリーズはプロ機。
上で述べたとおり、プロ機は「バージョン違いを同時に使用しても違和感を感じさせない」ようにできています。極論すれば初代EOS-1DsとEOS-1D X Mark IIを一緒に使っても、操作する上では違和感がないようにということです。もちろん、解像度も違えば連写性能もAF能力もまるで違うのでお話にはなりませんが、旧機種を使っていた人が最新機種を渡されても、それなりに使えてしまうということですね。
EOS 5Dシリーズも「プロ機路線」に向かっていますが、無印とIIはまだ「安価なフルサイズ機」ですね。私も使っていました。IIIからでしょう、プロ機を意識し始めたのは。IIIからは高くなってしまって、それと顔認識AFが入らなかったことにガッカリして離れてしまいました。
「お小遣い貯めてEOS-1D X Mark II買うぞ−!」という方向が私に合っているかどうか、古いEOS-1Ds Maerk IIIでも十分に確認できるという寸歩です。
いつまで使えるの?
修理期限はこちらで確認できます。
http://cweb.canon.jp/e-support/repair/period.html
2018年5月末日までは修理可能です。最悪、シャッターユニット交換やCPU、メイン基板の交換・メンテナンスもできますね。シャッターユニットは30万回耐久ですから、年間数万枚は撮影する私でもギリギリに好感すれば数年間は使い続けられます(その前に買い換えるつもり!)。
バッテリー他アクセサリーの入手性
バッテリー
10年前に発売・2010年に販売終了の機種ですから、入手したとしてもバッテリーはへたっています。しかしAmazonで「LP-E4」を検索するとたくさん見つかりますのでご安心を。LP-E4NとLP-19(とその互換)が使えます。
互換バッテリーは安いですが、容量・持続時間・耐久性・発熱等の問題があり、キヤノンのメーカー保証も受けられません。あくまで自己責任でご使用ください。まあ、今となっては他の選択肢は考えにくいんですけどね(^_^; いくら安く本体を入手しても、純正バッテリーは2〜3万円しますから。
私はこれまでEOS Kiss X7用LP-E12、EOS 5D用BP-511、EOS 5D Mark II・EOS 7D Mark II・EOS 6D用LP-E6の互換バッテリーを使ってみましたが、今のところ大きな問題は起きていません。LP-E6互換バッテリーの内1つだけ3回ほどの使用で充電不能になった物がありましたが、交換してもらえました。
バッテリーチャージャー
中古を入手してもたいていバッテリーチャージャーは付属していると思いますが、私の場合は互換品でした。
多少過熱しますが、無事に充電できています。
ファインダースクリーン
マイクロプリズム等のフォーカシングスクリーンに交換することもできます。Amazon等での入手性も悪くないようです。
アイカップ
直接顔に触れるパーツなので、傷んでいなくても交換したい人もいるかもしれませんね。
アイカップEgはEOS-1D X・EOS-1D X Mark IIと共通なのでまったく問題ありません。
液晶モニタ保護シール
ヨドバシカメラ他を回ったところ、店頭では専用品を見つけることはできませんでした。
汎用品を切って使うか、Amazon等で検索します。
メディア
CFカードとSDHC(32GB)までのメディアが使えます。
使い勝手は?
ファインダーの見え方
ファインダー倍率0.76倍と、現行のEOS-1D X Mark IIと同一です。
測距または測光範囲を示す薄いラインが入っていますが、明るく・ピントの山を掴みやすいファインダーは、最高機種ならではだと思います。ファインダーの見映えは物量(ペンタプリズムのサイズとか)でしか実現できないので、とにかくお金がかかるんですよね。
ホールディング
重い!ということを除けば、何も困ることはないと思います。私の手は大きくありませんが(小さい方かも?)、困りません。
マニュアルフォーカスの場合、右手でグリップを・左手はボディ下からレンズのフォーカシングリングを回すように握りますが「縦グリップが邪魔」ということもありません。
シャッターボタン・メインダイヤル周りはEOS一眼レフシリーズ共通です。EOS Kiss X7を使っている人でも、シャッターボタン周りの指の置き場に迷うことは無いでしょう。
そうそう、EOS M。なんでアレは一眼レフと違うデザイン(特にメインダイヤル・シャッターボタン周り)にしちゃったんでしょうね?あえてホールディングや操作性を悪くしたとしか思えないんですけどねえ?
携帯性
お世辞にも「携帯性が良い」とは言えない大きさ・重さですが「レンズが下向きにならない」というメリットがあります。ボディが縦に長く重いため、かなり重いレンズを付けてぶら下げても、レンズが下を向きません。
レンズを付けた状態でバッグに入れることは絶望的です。
プロ機らしい操作性
露出モード変更ダイヤルが無いのは、コンパクトカメラとEOS-1ぐらいですね。コンパクトカメラの場合はタッチパネルで全部操作ということで。EOS-1の場合は「意図しない設定変更を可能な限り排除する」という意図ですね。そもそも露出モードって撮影中はほとんど変更しないのに、なんであんなに目立つダイヤルになっているのでしょうね?「とっつきやすさ」が優先して、実使用無視ですよね。「TvとAvとPを状況に合わせてバンバン切り替えて撮影してるよ!」という方、いるのかなあ?私の場合、いつもAv。花火や付きの撮影でMをたまーーーーーに使うぐらいです。
メディア交換カバーにもロックが付いています。メディア交換は迅速性が要求されるので、よく分かりません。EOS 5D他のようなスライド式でも困らないと思うけどなあ?
背面ダイヤルロックは電源レバー式です。これは大正解!EOS 6Dのスタイルは勝手にロックされたり外れたり、使い物になりゃしません(T_T 私の6Dのロックスイッチはパーマセルテープで固定してしまいました。露出補正が必要な時ははがせばいいや・と。
視度調整ダイヤルは大型アイカップに隠れています。調整する時はいちいちアイカップを外さなければなりませんが、誤って触ってずれてしまうことがありません。これも「頻繁に調整しないものは触りにくくする」という考え方ですね。実際、しばらく使っていても微妙にずれたりすることがありません。
メニュー
メニューは現行EOSの祖先です。微妙にダサい(^_^; 細かいところで気になったのは、露出段階の設定です。
- ISOは1/3か1段ごと。私は1段ごとにしています。
- 露出(Avモードなら絞り値)は1/3・1/2・1段ごと。
- 露出補正は1/3・1/2段ごと。
ところが露出と露出補正はセットでしか変更できず、露出1/3露出補正1/3、露出1露出補正1/3、露出1/2露出補正1/2だけです。私は通常、露出1/2露出補正1/3に設定していたのですが、それが選べません。
背面液晶モニタ
23万画素の2インチモニタは、写っていることと露出を確認するのがせいぜいです。試してみましたが、ライブビューでピントを追い込むのも厳しい感じでした。
そのライブビューですが、LVレバー&ボタンがありません。いちいちメニューの「ライブビュー機能設定」で設定してから背面ダイヤル中央ボタンを押さなければなりません。今では考えられない手順ですね。
アイピースシャッターはEOS-1シリーズの専売になっていますね。昔はけっこう付いていたと思いますが、測光センサーの位置が変わったりしているので重要度が下がったのかな?
シャッター音
「カシュンッ」と、とても乾いた音がします。EOS 5D、6D、7D Mark II、ましてやKiss X7やフィルムEOS-1とも違う音で、けっこうビックリしました。現行のEOS-1D Xともまたちょっと違うように思います。
聞き慣れるとクセになる音です。
画質は?
EOS 6Dと交互に使っていますが、比較して差異があるとは思えません。
EOS-1Ds Mark III+Milvus 2/50M
EOS 6D+Milvus 2/50M
連写性能は?
仕様表では「連続撮影枚数:RAWで12枚」と書いてありますが、UHS-I Class10 32GB SDHCカードで7〜8枚程度で大幅減速しました。ISOは1600。ストレス溜まります!
超広角レンズを使って直近からダンサーの動きを追うような場合、少しの動きが大きく画面の印象を変えてしまうため連写せざるをえません。それが7〜8コマ(T_T しかも減速または停止からの復帰にけっこうな時間がかかります。
秒間5コマの連写性能にはまったく不満がありませんが、連続撮影枚数は期待外れでした。
あらためてISO200に設定、明るいところでテストしてみると
- CFカード・SDカードとも、RAWで12枚撮影した時点で停止。
- いずれも書き込み終了まで20秒ほど待たされる。
ライブ撮影時に連続撮影枚数が少なかったのは、高感度設定だったからかもしれません。RAWで12枚撮れればバッファは十分ですが、書き込みが遅いですね。書き込み中はすべての動作が遅くなったり、低速でも撮影できなくなったりします。
AF性能は?
高解像度の測光センサー(EOS-1D X Mark IIなら36万画素RGB+IRセンサー)を搭載していないため、EOS iSA SystemやEOS iTR AFが無く被写体認識ができません。よって当たり前の19点AFとなります。基本的にAFポイントにひっかかった、手前の物に合焦します。
AF動作はシャッター半押しから半呼吸おいて動作、という感じでお世辞にも速いとは言えません。
EOS-1Dは高速連写タイプ・EOS-1Dsは高解像度タイプですから、しかたのないことですね。それを統合しちゃったEOS-1D Xが凄いですね。
そもそもマニュアルフォーカスでの使用を前提に購入した中古機ですので、AF性能についての検証はこの程度で。
お散歩できるかな?
しばらく持ち歩いてみました。一番長かったのは光が丘公園散歩で3時間程度。ヘトヘトになりました(^_^; なにより首に食い込むストラップがきついです。
ファインダーが明るく、ピントの山も掴みやすいのでマニュアルフォーカスにはもってこいなんですけどね。それは重さとのトレードオフであったということです。
まとめ。
EOS-1D・Mark II〜IVは、避けた方が良いでしょう。センサーがAPS-Hサイズなので、EOS-1D Xのようなフルサイズ機とは使い勝手が大きく違ってしまいます。
EOS-1Ds・Mark IIまでは積極的に手に入れる必要は無いでしょう。修理期限が切れているためです。特にオークションでは何の保証もないこと(ノークレーム&ノーリターン)がほとんどですから、よほど安くなければスルーしましょう。
EOS-1Ds Mark IIIは、まだギリギリ修理可能期間が残っています。また、条件を選べば現行機にも大きく見劣りすることのない画質で撮影できます。解像度も2110万画素と、高解像度とは言えませんが十分です。「メインマシンで使いたい!」という人にはお勧めしませんが、私のように「マニュアルフォーカスで使いやすいマシンが欲しい」「プロ機に慣れておきたい」という人には、安く入手できるならうってつけです。
とまあ、細かいことはさておき。
使っていて気持ち良いです!肩にズッシリときて辛いですが、
- 身体に当たったりしても、勝手に設定が変わらない。
- ファインダー像が大きい。
- ダイヤルやボタン類の固さ・重さが適切。
- 指を伸ばせば必要なボタンがある。
- バッテリー切れの心配がまったく無い。
- 重いのでホールディングが安定する。
- 「かつての」とはいえ最上位機を使っている満足感。
といいことづくめです。
いとしのエリーズ@新宿野村ビルビアガーデン屋外無料ライブ撮影で手持ちのレンズを交換してみたところ、似合うのはシグマ35mm F1.4 Artまたは85mm F1.4 Artでした。似合うというのは「使っていてしっくりくる」ということで、格好いいとかじゃないですよ。
最終的にはEOS 6DにEF20mm F2.8 USM、EOS-1Ds Mark IIIに85mm F1.4 Artという体制になりました。85mmは「客舐め」で撮るためMFに設定しました。AF+フルタイムマニュアルフォーカスでは、シャッターボタンから指が浮いて再押しする度にAFが作動してしまうため、MFにしてしまいました。
メイン機にするには「連続撮影枚数が少ない」や「明るいレンズしか使えない低い高感度性能」という問題があります。また、ふだんからバッグに入れて持ち運ぶのは無理です。そもそも入らない(T_T
しかし当初の「EOS-1D X導入を目指すのは正しいか否か?」という疑問の回答はしっかりともたらせてくれました。EOS-1D X Mark II、導入しなきゃ!
この記事は2017/08/31に公開され、662 views読まれました。